ヘンリー・パーセルはイギリスのクラシック音楽史で唯一の存在です。その為に長老のような印象もありますが、36歳の若さでなくなっています。王室のオーケストラの常任指揮者となって世に出たのが弱冠18歳。短い生涯に400曲書き残しています。パーセルの活躍したエリザベス1世の朝廷はスポーツや娯楽が盛んな時代で、年中行事も多かったようなので作曲に演奏にといそがしいものだったでしょうね。ところがその繁栄が、音楽の発展のためにとイタリアから招いた音楽家に席巻されて音楽の世界はイタリア音楽一色になってしまってイギリスの作曲家がパーセル以降の音楽史に名前が出てこないものとなってしまいました。
海外のものがチヤホヤありがたがられるのは、坂本龍馬達の欧米への関心ぶりをみると同じだったんだと感じられますね。よくぞ日本の文化は残ったものだと思います。国土の占領よりも文化・・・心の占領はもっと怖いものです。アレグロとかピアノフォルテとか、ドレミファソラシドは総てイタリアからのもの。モーツァルト、ベートーヴェンの時代までオペラはイタリア語で聴くのが当然だった時代が続きます。クラシック音楽の世界では公用語と言って良いでしょう。英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語はヨーロッパ社会では嗜みだったのでしょうから、オペラはイタリア語で聴くものと定着してしまったのでしょうね。日本語の根強さは今でも、何でも日本語化してしまう強引さがありますね。
さて、パーセルの曲にはメアリー女王のための音楽が多くあります。エリザベス1世を名指ししないでも、メアリー女王を讃えることはエリザベス女王と、国歌を讃えることになっていたのです。オードとは称賛する歌、頌歌(しょうか)のことです。ロックでもドアーズのジム・モリソンが「グラスホッパーのオード」を「ジ・エンド」に引用していたりしますね。
バロックの森 -パーセルの“メアリー女王の誕生日のためのオード”-
NHK-FM 2010年9月15日、水曜日 午前6時放送 案内・礒山雅
- パーセルの“メアリー女王の誕生日のためのオード" -
「メアリー女王の誕生日のためのオード
“さあ、栄光の日がやってきた"」パーセル作曲
CELEBRATE THIS FESTIVAL - BIRTHDAY ODE FOR QUEEN MARY, 1693
(23分42秒)
- シンフォニー(序曲)
- 祝え、この祝日を
- さあブリテンよ、お前の心配事を紛らわすのだ
- 祝え、この祝日を
- この日は神聖な日、トランペットは鳴り止むように命じなさい
- 陰気な不和をほほえんで追いやらせよう
- 祭壇に冠をかぶせ、聖堂を飾り
- すべてに若々しい花で装われた
- 今まで悲嘆に暮れてきた四月は
- だからあなた方は去ってゆく四月が、こう言うのを聞くだろう
- このような国王夫妻をもっている
- 大儀のために武器をとっているのに
- 戻れ、愚かなミューズよ、戦争への思いは
- マリアの日を心から歓待せよ
(ソプラノ)エマ・カークビー
イヴリン・タブ
(カウンター・テノール)マイケル・チャンス
(テノール)イアン・ボストリッジ
(バス)スティーヴン・リチャードソン
サイモン・バーチャル
(合唱)ウェストミンスター大寺院聖歌隊
(管弦楽)ニュー・ロンドン・コンソート
(指揮)マーティン・ニアリー
<Sony classical SRCR9900> 放送で使われた日本盤CDは廃盤になっています。中古盤(輸入盤 Sony Classical SK66243 2001年4月26日発売) は入手可能です。
「メアリー女王の誕生日のためのオード
“来たれ、芸術の子ら"」パーセル作曲
(23分40秒)
- シンフォニー(序曲)
- 来たれ、芸術の子ら
- トランペットを吹き鳴らせ
- 来たれ、芸術の子ら
- ヴィオルを鳴らし
- これほどの祝福を与えたこの日は
(ソプラノ)エミリー・ヴァン・エヴェラ
(カウンター・テノール)ティモシー・ウィルソン
(テノール)ジョン・マーク・エインズリ
チャールズ・ダニエルズ
(バス)デーヴィッド・トマス
(合唱)タヴァナー・コンソート
タヴァナー合唱団
(管弦楽)タヴァナー・プレーヤーズ
(指揮)アンドルー・パロット
<東芝EMI TOCE-11280-81> 1999年5月26日発売「パーセル:祝典オード&アンセム集」、廃盤。
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