忘却されていた音楽家の1人、グラウプナーの作品4曲がNHK-FM「バロックの森」で紹介されました。音楽史上においてはバッハがトーマス教会のカントルになる事を、とても強く推薦したことで名前が出てきます。クラシック音楽のとても大切なところでのキーパーソンになっていることだけでも素敵な名前の残し方をしたものだと思います。でも、何故? そんなにグラウプナーって影響力の強い存在の音楽家なの、って言うのが正直な思い・・・でした。
グラウプナーの音楽活動はJ.S.バッハのそれを覆う感じです。晩年がバッハ、ヘンデルと同じに失明していることまで同じです。やはり50年も毎日教会で演奏するための新曲をひたすら書き続けたことでの、目の酷使でしょう。
作った曲は2,000曲と多く、宗教曲が1,500曲ほど。でも、割合としてはバッハよりも楽器のための作品が多いほどです。これほどの作品が残っていながら忘れられていたとは驚きですね。人知れぬ作曲家ならともかくも、バッハを推薦するほどの知名度のあった作曲家であるのですから。
まあ、グラウプナーがバッハをトーマス教会のカントルに推薦するきっかけとなったのが、実のところはグラウプナー自身にカントルの仕事への誘いがあったことにあります。でも、グラウプナーを気に入っていた伯爵(ヘッセン=ダルムシュタット方伯エルンスト・ルートヴィヒ)が手放さないと譲らなかったからです。グラウプナーの死後、伯爵家が遺族に権利を譲らなかったことが忘れ去られる大きな原因なのですが膨大な作品が散逸を免れたのは“幸”なのか“不幸”なのか。
1970年になってバロック音楽のブームが到来、バッハやヴィヴァルディといったブーム以前から演奏されていて作品が改編されていたり、長年の手垢にまみれた音楽ではなくて作曲された当時の純然たる作品がないのだろうかという音楽家達が発見した作曲家がグラウプナーだったのでした。思いがけない大きな宝物を見つけた思いだったでしょうね。これからどしどし演奏、録音されていくことに期待しています。
数年前にモーツァルトの新曲が発見されたり、昭和40年頃まではショパンが見つかったりしていましたけれどもいずれも小曲。グラウプナーが一般的に親しまれるようになれば、クラシック音楽のレパートリーが一気に2,000曲増えることになるのですから嬉しいものです。
さて、日頃からクリストフ・グラウプナーと名乗ってファーストネームのヨハンは使わなかったといいます。何故だろう?バッハへの敬意かな?。ちなみにテレマンの友人でもありました。管弦楽曲が華やかなのは渋いバッハよりはテレマンを思わせますよ。
バロックの森 -グラウプナーの作品-
NHK-FM 2010年9月16日、木曜日 午前6時放送
案内…礒山雅
- グラウプナーの作品 -
(18分46秒)
(管弦楽)ダス・クライネ・コンツェルト
(指揮)ヘルマン・マックス
放送されたCD:<CPO 999 592-2 >
「歌劇“カルタゴ女王ディドー"から」 グラウプナー作曲
- ディドーのアリア“不安な墓穴の牢獄にあって" (1分46秒)
- ユノーのアリア“荒れ狂う復讐が雷の矢を作り出す" (1分26秒)
- ディドーのアリア“裏切られた気高い女は"(5分17秒)
(ソプラノ)イングリット・シュミットヒューゼン
(演奏)レジデ・ウールーズ
(指揮)ジュヌヴィエーヴ・ソリー
※1707年、ドイツ・ハンブルグで作曲。
「ファゴット協奏曲 変ロ長調」 グラウプナー作曲
(11分31秒)
(ファゴット)マテュー・リュシエ
(演奏)レジデ・ウールーズ
(指揮)ジュヌヴィエーヴ・ソリー
※1731年、ドイツ・ダルムシュタットで作曲。GWV.340
「チェンバロとバイオリンのためのソナタ ト短調」
グラウプナー作曲
(7分46秒)
(チェンバロ)ドロテーア・ヴェンチューラ
(バイオリン)オリヴィエ・ブロー
※1740年、ドイツ・ダルムシュタットで作曲。GWV.711
放送されたCD:<Analekta AN2 2014 >
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