聴けば「あっ、この曲は良く知っている」と誰もがなる“嬰ハ短調のワルツ”が、標題のないワルツ第7番です。ショパンのワルツで悲しげな曲は何でしょうか、と問われて代わりに案内される「別れのワルツ」に人気を横取りされていそうです。わたしは「別れのワルツ」の人気は、この嬰ハ短調のワルツが良い水先案内人を演じているからではないかと思います。
ショパン晩年の曲につきまとう哀愁。テンポ・ジュストで演奏されるこのワルツは、訥々と何かを思い起こそうとしているようです。曲のつくりは「仔犬のワルツ」と同じに出来ています。中間部で変ニ長調(仔犬のワルツと同じ調)に転じますが、穏やかな楽想でもメランコリックな感情は維持されています。ワルツと言うよりもマズルカのようですね。病気の進行を感じ始めていたショパンが、元気にかけまわっている仔犬の様子を観ているうちに、自分のこの先の不安を思っていたのではないでしょうか。楽譜はナタニエル・ドゥ・ロスチャイルド男爵夫人に献呈されました。
この曲に標題をつけるとしたら、あなたならどうつけますか。ちょっと、曲を聴いている間だけでも考えてみて下さい。
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